まさに本物の生態写真集

日本鞘翅学会 常任幹事 露木 繁雄

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鈴木正雄さん まずは写真集発刊おめでとうございます。
 昆虫関係の生態写真集は、古くからそれこそ数限りなく出版されてきました。しかしながら、カミキリムシに限れば、生態写真集という形の単行本としては、少なくとも日本では初めてではないでしょうか。甲虫愛好者の方なら、おそらくほとんどの方が、不思議に感じていたことではないかと思います。 
いままで、カミキリムシの生態写真集はたいていの場合、図鑑の一部として扱われていました。もちろんこれは、単行本として出版しても、ペイできないという経済的な問題も大きかったと思います。しかしながら、日本のカミキリムシの世界もかなり研究が進み、分類面だけでなく、生態の面でもこういった本が要求される時代になったのではないかと、私は感じています。
そういった意味からも、この本の発刊は、まことに時宜を得たグッドタイミングの企画だと思います。
 単にタイミングの良さということだけでなく、内容についても従来のカミキリムシ生態写真集とは、ひと味違ったものになっています。これは鈴木さんのカミキリムシに対する、いや自然に対する姿勢というか、考え方・思いやりが滲み出ているためではないでしょうか。
具体的には、今までのカミキリムシの生態写真の多くは、私の知る限り、たいてい大きくて派手な種類か、いわゆる珍品の類がほとんどでした。ところが、この写真集には今までかえりみられなかったような、地味でごく普通の種類も数多く含まれています。これが一点。
二点目は、生態写真によくある、いわゆるヤラセがまったくないこと。そして三点目、鈴木さんはプロの写真家ではないということ。さらに四点目は、カミキリムシの本当の姿を徹底的に見ようとする彼の姿勢が、ふつふつと顕れているためではないでしょうか。鈴木さんは中学生の頃から虫に親しんで来られた。社会人とて教職の道に入り仕事に専念した40年近くは虫の世界から遠ざかっていたと伺っています。1996年にリタイヤされてからは、失礼な言い方をお許しいただけるなら、いわゆる「焼け棒杭に火がついた」状態で、北は北海道から南は南西諸島の果てまで、カミキリムシを求めて駆け回わり
ました。
 彼の写真歴がどれぐらいなのかしりません。また、プロの目からみてどのような評価を受けるのかもわかりません。しかしこの本に収められた大部分の写真が、この数年の間に撮られたものであることに心底驚いています。 鈴木さんは、この本を彼自身のカミキリムシとの付き合いの集大成と考えておられるようですが、私としてはこれだけの内容のものを、これで終りにされるのは、あまりにももったいない気がしています。ぜひ第2弾、第3弾の出版を期待して止みません。 この写真集はまさに「百聞は一見にしかず」。カミキリムシのベテラン愛好者や研究者であっても、きっと目からうろこが落ちるようにな新知見や感動が、いっぱい詰まっていることに驚かされるでしょう。ぜひ手に取ってご覧になることをお奨めいたします。  2004年12月 記


序文 発刊おめでとう  露木繁雄
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